腱付着部炎(上腕骨外側上顆炎)に対するボツリヌストキシンは効果があるのか

2020年9月28日月曜日

 上腕骨外側上顆炎(テニス肘)を始めとした腱付着部炎の発症頻度は高く、中年以降にしばしば見られます。これらに対しては、手首や指のストレッチ、スポーツや手をよく使う作業をひかえて、湿布や外用薬を使用すること、 外側上顆への局所麻酔薬とステロイドの注射、テニス肘用のバンドを装着などが行われるが生活と密接に関連していて改善しないことも多い。https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/lateral_epicondylitis.html

基本的には腱付着部への機械的なストレスをどのようにコントロールすべきかという観点は重要と考えられ、これまで改善が乏しいケースについては外科的な治療も行われているが、統一した見解は得られていない。

ボツリヌストキシンは下肢の痙縮を含めた筋の過緊張状態を緩和して病態を改善させる治療として広く使われてきているが、これを外側上顆炎に対して使うとどうなのかという点は難渋例にどう対応するのかという点で重要と考えられる。これまでの研究ではステロイド注射と同等という報告が散見されるがまとまった報告はなかった。

今回、外側上顆炎(テニス肘)に対するボツリヌストキシンのシステマティック・レビューがあったので紹介する

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0269215517702517

目的:外側上顆炎の患者における非外科的治療と比較したボツリヌス毒素の有効性を調査する。

方法:最初の記録から2017年2月までのPubMed、Scopus、Embase、AirityLibraryなどのデータソースが検索した。研究デザイン、患者の特徴、ボツリヌス毒素の投与量/ブランド、注射技術、および痛みと握力の測定値などを調査しまとめた。鎮痛および握力低下の標準化された平均差(SMD)は、注射後2〜4、8〜12、および16週間以上の時点を調査タイミングとした。

結果:ボツリヌス毒素をプラセボまたはコルチコステロイド注射と比較した6件のランダム化比較試験(321人の参加者)が存在した。プラセボと比較して、ボツリヌス毒素注射は3つの時点すべてで痛みを有意に軽減した(SMD、-0.729、95%信頼区間[CI]、-1.286〜-0.171; SMD、-0.446、95%CI、-0.740〜-0.152; SMD、-0.543、95%CI、それぞれ-0.978〜-0.107)。ボツリヌス毒素は2〜4週間でコルチコステロイドよりも効果が低く(SMD、1.153; 95%CI、0.568〜1.737)、両方の治療は8週間後に効果が類似しているた。異なる注射部位と投与量/ブランドは有効性に影響を与えなかった。ボツリヌス毒素は注射後2〜4週間で握力を低下させ、麻痺効果が8〜12週間に及ぶ可能性があった。

結論:外側上顆炎を治療する場合、ボツリヌス毒素はプラセボよりも優れており、16週間持続する可能性があった。コルチコステロイド注射とボツリヌス毒素注射は、コルチコステロイド注射が初期段階での痛みの緩和に優れており、最初の12週間でグリップの弱さが少ないことを除いて、ほぼ同等であった。

現在、本邦において腱付着部炎に対するボツリヌストキシンは保険適応がない。ただ、メカニズム的に筋力低下の可能性があるものの効果がある可能性はあることが示された。


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