国際疼痛学会声明:カンナビノイドに関する非技術的なサマリー 2021
以下の声明は2021年2月9日のIASP評議会で承認されました。(https://www.iasp-pain.org/summarystatement)
IASPでは大麻とカンナビノイドの前臨床研究と臨床上の安全性と有効性を検討した結果、重要な研究上の隔たりが明らかになりました。質の高い臨床エビデンスがないため、IASP は現在、大麻とカンナビノイドの痛みの緩和のための一般的な使用を支持していません。IASP は、この研究における隔たりを埋めるための前臨床および臨床研究と、このテーマに関する教育が急務であると認識しています。
背景
国際疼痛学会(IASP)は、研究、教育、臨床実践を支援し、あらゆる疼痛疾患の患者の転帰を改善するために活動しています。世界の痛みの軽減を改善することを目的とした世界的な組織として,IASPには公衆衛生を護る事や痛みの研究と治療に関連する問題に対処する義務があります。そのような問題の一つに、痛みの緩和を目的とした大麻やカンナビノイドへの関心の高まりとその使用の課題があります。世界では、大麻やカンナビノイドの使用を認めている国や地域が増えていますが、その際には、新薬を承認するための従来の確立された規制プロセスが適用されないまま進んでいる場合もあります。
この差し迫った問題に対応するために、IASPはプレシデンシャルタスクフォースを設置しました。Andrew Rice教授(Imperial College London)の指導のもと、タスクフォースは、痛みを軽減するための
大麻およびカンナビノイドの有効性と、そうした使用の安全性に関する IASP の立場表明を作成しました。ポジション・ステートメントに反映させるために、タスクフォースは2年半かけて、入手可能な研究を徹底的に評価し、これまでで最も詳細で堅実な分析を行いました。この取り組みから得られた科学的な成果は、雑誌「PAIN」に掲載されています。
まとめ
現時点では、大麻とカンナビノイドの痛みに対する一般的な使用をIASPが支持するには、十分な高品質のヒト臨床安全性と有効性のエビデンスが存在しません。実験室での多種多様なカンナビノイドに関する研究では、効果的な痛みの緩和が期待されていますが、そのほとんどがまだ実際の疼痛患者でテストされていません。この問題について、人々が十分な情報を提供され、保護されるためには、生産、販売、表示に関する規制の安全性、基準、管理をより厳格にすることが推奨されます。また、タスクフォースは、エビデンスにいくつかの隔たりがあることを見つけています。これらの隔たりを解消するための先決順位を定めた研究アジェンダも発表しました。
これらの先決事項には、大麻またはカンナビノイドから最も恩恵を受ける可能性のある痛みを持つ患者と、最も害を受ける可能性のある患者の特徴を特定することが含まれています。また、試験対象となる化学物質の種類を増やし、適切な投与量とその効果を特定し、最適な投与方法を決定する必要があります。また、研究チームに患者のパートナーを加えることも推奨されます。
結論