睡眠と慢性疼痛:脳波による解析の試み

2020年5月25日月曜日

痛いから寝られないと患者は訴える。しかし、仕事が立て込んで寝られないような日々が続くと健常なものでもあちこちの筋痛などは必ずと言っていいほど出現する。
脳波は頭皮に置かれた直径1センチの電極から数百万個(約6 cm2)の神経細胞の集合電位として記録される。覚醒時にはリズムよくα波が出現するが、睡眠第1期に入ると段々平坦化し徐波化し、睡眠が深くなると更に変化していく。この変化は中脳網様体、視床、皮質の順に求心性支配が順次減少するためと考えられている。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%84%B3%E6%B3%A2#%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E6%99%82%E8%84%B3%E6%B3%A2)(http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1861.pdf

この様に脳波は波形のスペクトルを解析することが出来スペクトルパワー分析が慢性疼痛患者の皮質活動を対照者のそれと区別することも報告されている。
これらのスペクトルパターンをさらに研究することで、慢性疼痛に関連するプロセスをより深く理解することができ、さらに臨床と研究の両方の設定で使用するための慢性疼痛の潜在的な生体指標を提供することができるかもしれない。ただ、睡眠不足のグループではは、スペクトルパワー特性、特にα帯域幅のパワー活動において同様の特性を示している事が知られる。
Camffermanらは睡眠と慢性疼痛と脳波の関係について以下の方法で研究報告をしている。
慢性的な痛みを持つ103名の患者の痛みと睡眠の質の評価に加えて、安静時覚醒時脳波データを記録した。Promax回転を用いた2つの主軸因子分析により、参加者から提供された関連する質問票データから疼痛因子と睡眠因子をひとつずつ得た。これらの因子を用いて、大脳皮質の前頭前野および頭頂部におけるαおよびθ帯域幅のパワーとの仮説的関係を検定した。
α帯域幅パワーの低下が慢性疼痛強度評価と睡眠障害の測定値の両方と独立して関連していることを示唆される結論が導き出された。逆に、シータ帯域幅パワーは慢性疼痛や睡眠の質の指標のいずれにも関連していないことがわかった。
これにより、慢性的な痛みの強さと睡眠障害が、慢性疼痛を持つ個人のαスペクトル帯域幅活動に関連していることを裏付けられた。

Pain Medicine, Volume 18, Issue 10, October 2017, Pages 1921–1931, https://doi.org/10.1093/pm/pnw294



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