バーニングマウス症候群

2020年5月14日木曜日

臨床研究学習帳

原発性焼灼性口腔症候群(BMS)は、「臨床的に明らかな原因となる病変を伴わない、口腔内の焼灼感または味覚障害を3ヶ月以上毎日繰り返す」(IHS 2013)と定義されている。
痛みに加えて、味覚の変化(味覚障害、口腔乾燥)も頻繁にみられる。神経障害の臨床的徴候はないが、より正確な診断法では、BMSの神経軸の様々なレベルでの神経障害の関与が示されている。末梢小線維損傷(熱定量感覚検査、電気味覚検査、上皮神経線維密度)、末梢または脳幹の三叉神経系の病変(脳幹反射記録、三叉神経グラフ、誘発電位)、または中枢神経系内の抑制低下の徴候(脳幹反射の慣れの欠如、定量感覚検査での陽性徴候、線条体ドーパミン機能の欠如を示す神経伝達物質陽電子放出断層撮影所見)などである。
電気味覚検査の異常は、体性感覚小線維に加えて、Aδ味覚小線維の関与が示唆されている。
これらの所見でBMSの臨床像は、末梢型と中枢型の神経障害性疼痛に対応する2つサブタイプに分けられ、個々の患者では重複している可能性がある。中枢型は局所治療に反応せず、精神疾患(うつ病や不安)を合併していることが多いが、末梢型は末梢性リドカインブロックやクロナゼパム外用薬に反応する。バーニングマウス症候群は閉経後の女性に最も多くみられ、閉経に典型的な神経保護性生殖腺ホルモンの減少とストレスホルモンレベルの上昇の中で、特に脆弱な小線維と基底核に影響を及ぼす神経毒性因子によって引き起こされる神経系の損傷の結果としてBMSが誘発されるという仮説が導き出されている。


Jääskeläinen, Satu K.
PAIN: March 2018 - Volume 159 - Issue 3 - p 610-613doi: 10.1097/j.pain.0000000000001090

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