開胸術と痛み

2020年6月7日日曜日


開胸術のあとで長引く痛みを経験するケースは多い。
肺がん、心臓手術、大動脈の手術だけでなく整形外科手術でも肋骨を切除して胸椎などにアプローチをしないといけないケースは多い。
肋骨切除に伴いしばしば肋間神経の症状も出現するし、広背筋なども含めて周辺筋群の切離などによる筋障害、胸腔内癒着など様々な問題が起こってくる。生命をかけた治療になるためこれらの障害やそれに伴う痛みはしばしば二の次三の次になりがちであるが、広い広範な痛みはしばしば難治性の経過をたどる。
今回、Pain Reportに開胸術後の痛みついての論文が紹介されている。
(Post-thoracotomy pain syndrome: seldom severe, often neuropathic, treated unspecific, and insufficient Arends, Svena,*; Böhmer, Andreas B.b; Poels, Marcelb; Schieren, Marcb; Koryllos, Arisc; Wappler, Frankb; Joppich, RobinbAuthor Information PAIN Reports: March/April 2020 - Volume 5 - Issue 2 - p e810
doi: 10.1097/PR9.0000000000000810)

胸腔切開後疼痛症候群(PTPS)の有病率は33~91%と文献で報告されている。しかし、PTPSの有病率や神経障害性に関する開胸手術(TT)とビデオ支援胸部手術(VATS)の違いについては、まだ系統的に調査されていない。また、鎮痛剤による治療法やその有効性についての知見は限られている。

方法:TTおよびVATS後6~30ヵ月後の488名の患者を対象に、構造化された電話インタビューを実施した。疼痛については、Leeds Assessment of Neuropathic Symptoms and SignsおよびBrief Pain Inventoryを含む構造化質問票を用いた。

結果
PTPSの有病率は28.6%でした。患者の13.2%は、痛みの強さの数値評価スケール> 3を持ち、患者の4.6%は、痛みの強さの数値評価スケール> 5を持っていました。 PTPSの場合、患者の63%が神経障害性疼痛を患っていました。開胸術後疼痛症候群は、VATS後よりもTT後の方が多く(38.0%対29.3%、P <0.05)、65歳未満の患者(42.3%対26.4%; P <0.05)で多かった。 TTはより頻繁に神経因性疼痛をもたらしました(67.7%vs 43.9%; P <0.05)。 PTPS患者の46%が鎮痛薬を受けました:非オピオイド30.3%、オピオイド25.2%、抗けいれん薬10.9%、抗うつ薬1.7%。神経障害性疼痛のある患者の17.4%で神経障害性疼痛治療剤が使用された。患者の36.7%で報告された痛みの軽減は30.0%未満でした。



結論
胸腔鏡手術後疼痛症候群は推定されているほど一般的ではない。ほとんどの場合、痛みの強さは中等度であるが、重度の痛みに苦しむ患者には特別な注意が必要である。痛みのために重度の身体の障害を負うことが多い。PTPSの予防にはVATSのような組織保護手術が有効である。鎮痛薬は過少投与されていることが多く、神経障害性疼痛には特異的ではなく、不十分である。


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